Cotton Candy

夢の続きは、ひとつかみの綿菓子

演奏会

朝起きたら、長男の髪が黒だった。(以前の日記に、黄色になっていたって書いたはず・笑)

「どしたの?」思わず尋ねた。

「いや、今日の演奏会は黒の方がいいと思って」

「誰かに言われたの?」

「ううん、言われてはいないけど・・・」

ま、自分から場を読んだんだろうな。確かに今日の演奏会で、もし黄色の髪だったら浮いていた。昔、サッカーの中田選手だけが髪の色が違っていて目立っていたけど、彼の場合は実力も秀でていたから、それで良かったと思う。でも息子の場合は、むしろ他の人より圧倒的に下手で、経験もないわけだから、地味に黒にしたのは正解だったと思う。

不思議なもので、黄色の髪に慣れてしまっていたから、黒髪は違和感あって別人のようだった。それだけ、髪の色ってその人のイメージを作り上げるってことなのかも。

「なんかさ、人工的な黒色って感じで嫌なんだけどさ」

なんて生意気なことを言って、照れ隠しをしていた。

 

演奏会というのは、高校のオケの同窓生で編成されているSフィルハーモニー管弦楽団の第50回演奏会。毎年そのたびに卒業生に参加を公募し、メンバーを編成する。歴史ある楽団なので、70過ぎの人をはじめ年配者が多く、息子のような大学生はほんの数人だった。しかも、このような楽団に参加する人は、プロやセミプロの人も多くて、練習にさえきちんと出ていなかった息子が壇上に乗るなんて、それだけでおこがましい感じだった。演奏が始まってしばらくは、私は息子が楽譜をめくるのを失敗しませんように、なんて祈っていた(笑)。ヴァイオリンの息子はもちろん左席に座る下っ端だから。

でも、3番目の「ラフマニノフ交響曲第2番」のころにはそんな心配はすっとんで、彼らの素晴らしい演奏にどっぷり使っていた。何より印象的だったのは、演奏者たちが演奏を楽しんでいることだった。それが皆表情に出ているし、チェロやコントラバスなんて楽器とともに踊ってる感じだった。何しろ皆大人だから、もう何十年もその楽器とともに人生を歩んでいるのだ。そこからにじみ出る音が確かにある。そこが、日頃聴いている学生オケとは明らかに違う。年の功というのは、何にでもあるんだと思う。

ラフ2は、本当に美しい。特に3楽章は、涙がでてきてしまいそうなくらい美しい旋律で出来ている。美しい。本当に美しい・・・

つらいときに何も言わず背中に手を当ててもらえるような優しさが、音楽にはあると思う。もちろん、クラッシックに限らず、どんな音楽にも。

 

演奏が終わって、ホールに出て、一応さーっと周りを見回した。もしかしたら、知ってる顔があるかなと思って。だって、この高校は私の母校でもあるから。