Cotton Candy

夢の続きは、ひとつかみの綿菓子

偶然

こないだ仕事の帰り、電車に乗ったら思いの外空いていて、空いている席に座った。ふと前に座っている人たちを見たら、4人のうち3人が(マンガとか週刊誌でない)ちゃんとした本を読んでいる。皆、真剣な表情。へー、今どき珍しいな、って思って、何気に横を見たら、横の人も文庫を読んでいる。え?これはすごい、と思って、そのまた横の人をのぞき込んだら、何と、その女性も分厚い新刊書を読んでいるではないか。思わず、自分を含めて、ここに今何人いて、何人が本を読んでいるのか数えてしまった。9人中5人、つまり半数以上の人がこの時代に電車で本を読んでいた。これは珍しい。すごく珍しい。思わず、ハイクしてしまった(笑)。

そのとき、私は本なぞ持っていなくて(いつも通り)スマホをいじっていたのだけど、本を読んでいるオジサン、オバサン、おじいさん、高校生女子がとても素敵に見えて、相変わらず単純なため、そうだ、私も電車の中で本を読もうと決めたのでした。折しも、ある人のエッセーに、信号待ちでも本を開く、というのを読んで、そうやって細切れ時間を有効に使うんだと感心したばかり。電車に乗っている時間はわずかだけど、たとえ数ページでも頭に入れようと、明くる日から、積ん読中の文庫を手にして、電車に乗ることに。というより、ホームにいるときから本を開いていた。

幸いなことに一般的な通勤時間帯ではないし、逆方向なので、混んでいるという状態ではない。それでも空いている席があれば、座って読みたい。そう思って、車内を見回す。空いている席ならどこでもいいって訳じゃない。だって、今って、本当に変な人(怖い人?)が車内にいたりするから(泣)。

で、思った。あのとき、本を読んでいた人たちもそうやって席を選んだのだと。きっといつのまにか自分が本を読むのに最適な席を選んだのだ。自分の行為と同じ、本を読んでいる人の近くの席なら、安心して読書に没頭できるではないか。その結果、その一つの場所に5人もの人が集まったのだ。

だから、あのとき、今どき本を読む人さえ珍しいのに、その人たちが一カ所に集中するなんて、凄い偶然だ、と思ったけど、それは偶然ではなくて、必然的に作られた光景だったってこと。

で、世の中には、そういう風に、偶然!と思うことが実はそうではないことがあるんだよな、って改めて思ったわけです。