Cotton Candy

夢の続きは、ひとつかみの綿菓子

L : life

とあるところで中年のおじさんに声をかけられた。発作的に無視して嫌な顔をしたら、なんと学生時代の友人だった。びっくり!お互い急いでいたので長い話はできなかったけど、「今、こんなことしてるんだ」と名刺を差し出され、またまた仰天。カタカナ名の会社に代表取締役社長という肩書が付いている。「社長してるの?」「そう、つくったんだよ」「じぇじぇ」←さすがにこれは言わなかったけど、心の中では、じぇ×5。

夜、パソコンでその会社を検索してみる。従業員40名程度のその会社は、まさにベンチャービジネスともいうべき、今まで誰も気づいていなかった新分野を展開しているユニークな会社だった。経済ど素人の私でさえ、これはすごい、と思った。将来的にも(ライバルが現れない限り)有望なビジネスだと思った。

実は彼とは不思議な縁がある。結婚してすぐ夫に付き添いイギリス生活をしてたころ、私はどうしても休みが続くとパリに行きたくて、無理して(節約のために船と列車を使って)幾度となくパリに行っていた。そのパリの地下鉄入口で(トイレに行っている夫を待っている間に)偶然会ったのだ。そのときも、じぇ×5だった。小さな輸入会社のパリ支店長としてパリにもう2年駐在しているとのこと。その会社というのが輸入だけでなく、(バブルに乗っかって)いろんなことをしている会社だったから、今から思えば、そこで様々なノウハウを学んだのだろう。

私の知ってる彼は地味で、無口で、これといった特徴がなく、「一日一冊本を読んでる」を自慢にしてたけど、これだけじゃ就職は難航するのが当たり前で、最後の最後にその会社に、(言葉悪いけど)拾ってもらったという感じだった。でも、きっとそこで変わったのだと思う。社長に見込まれ、パリ支店長に抜擢され、そこでも活躍したのだろう。その後バブル崩壊になり・・・だいたいの想像はつく。

日本に帰ってきてしばらくして、いつだったか、彼から電話をもらったのを覚えている。仕事をしてみないか、という誘いだった。そのとき、私は双子の育児真っ最中で、冗談じゃない!こういう状況なのよ、と何も聞かずに即座に切ってしまった。そのときは、その輸入会社で働かないか、とばかり思っていたけど、今から思うと、その立ち上げたばかりの自分の会社のことだったに違いない。昨日、調べた、その会社の設立年月を見て、それが分かった。

もう、彼に会うことはないと思うけど、もしまた偶然会ったら、そのときは、奇妙な縁を感じるから、仕事の相談でもしてみようと思う。人生は不思議だ。事実は小説より奇なり。