Cotton Candy

夢の続きは、ひとつかみの綿菓子

C : 長男とチャオ

 

春休みである。大人には関係ないとはいえ、お弁当作りから解放されて、ヒジョーに嬉しい母である。 

大学生の長男は相変わらず自分のことで忙しい。先日もカンボジアから帰った明くる日からスキーに行ってしまうし、その後もサークルやバイトなどで、ほとんど家にいない。いないのだから、会話もしていない。

そんな希薄な親子関係だが、今日は彼のバイトが午後からで、私もオフだったので、急遽イタリアンのお店で少し早めのランチをすることにした。弟、妹も一緒に4人で。

ランチメニューは、ピザが何種かとパスタが3種あった。次男はピザで、私と娘はAのパスタ。長男がBのパスタを選んだ。店内は明るく、店員さんも若い人が多く、気持ちがいい店である。お客が入ってくれば「チャオ!」なんて挨拶するし、オーダー取れば「マルゲリータお願いしまーす!」など威勢良く、オープンキッチンに向かって叫んでいる。

先にサラダが来て、いろいろしゃべりながら食べていた。すると、たまたま私の耳に「なんとかなんとか(カタカナの料理名)、間違えました~」という声がキッチンから聞こえてきた。嫌な予感がした。まもなく、オーダーを承った女性が来て、(長男が頼んだ)パスタBを間違えてパスタCを作ってしまった。これから作り直すので、さらに7,8分かかる。もしくは、そのままパスタCでも良いか。ということだった。もちろん丁重に謝ってのことだ。

4人とも一瞬沈黙した。と、すぐに長男が笑顔で「あ、いいです、それでお願いします」と間違えたメニューにOKを出した。あまりの即答に私は驚いた。その後まもなく、4品揃って運ばれてきて、私たちは食べ始めた。

私「ワタオ(長男・仮名)は偉かったね。ワタオの一言で、お店のどれだけの人が救われたことか」

ワタオ「そりゃ、(フレンチの店で)バイトしてたから分かるもん」

明らかにお店のミスなのだから、怒りをぶつけることはできる。でも、仕事をすれば分かるけど、だれにでもミスというのはある。もちろん生命に関わるような重大なミスは大変なことだけど、そうでもない限り、これくらいの寛容はもっていたいと私は思う。それを教えることなく、(バイトとはいえ社会体験のおかげで)長男にいつのまにか備わっていたのが、嬉しい。一緒にいた弟妹だって、お店の人に文句を言う兄より、優しい兄で良かったと思っただろう。

その後しばらくして、店長が、お詫びのしるしとして、私たちにアイスクリームを持ってきてくれた。とーっても美味しいアイスクリームだった。もちろん、ピザもパスタAもCもとても美味しかった。帰る頃は店内は混んでいたが、お店の人たちは皆、笑顔で元気に接客していた。私たちも気持ちよく店を出たのだった。 

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